より高度な医療を求める患者さんの気持ちとはすごいものです。本日、電話で“そちらの病院ではMRIはありますか?”というお問い合わせがありました。その方がどうしてMRIが必要なのかまでは伺えませんでしたが、かわいいペットのためになんとか近場でないものかとおそらくタウンページを捲られていたのでしょう。
MRIはレントゲン以上に病変部を明らかにしてくれるすばらしい器械だと思います。けれども設置工事からMRI本体、そしてランニングコストの全てを計算してみると、正直個人経営の動物病院ではとうてい維持できる代物ではありません。東京近郊では設置されている病院もあるかも知れませんが、私の知る限り大学病院クラスではないと設置はされていないかと思います。検査が必要とされるなら、おかかりの病院で紹介してもらうことが良いかと思いますよ。
大型犬種によくみられる股関節形成不全や離断性骨軟骨症、小型犬種ではレッグペルテス病や膝蓋骨脱臼などブームになる犬種(全てにではないが!)には何らかの遺伝疾患を抱えています。特に痛みに関しては本人がどの位痛みを感じているのかはわかりませんが、飼い主としては見ているのが辛いことだと思います。痛み止めというと、アスピリンに始まり非ステロイド系のエトドラク・カルプロフェンと様々な薬が発売されてきましたが、さらに新しいものが最近発売されました。
ズブリン(テポキサリン製剤)という製品なのですが、今までの薬と違い口の中に入れるとすぐに溶けてしまう(口内崩壊錠)もので、お薬を投与する側もされる側もストレスなく与えることができます。とかく薬というと抵抗がありますがこれはなかなか画期的なものなのではないでしょうか?痛み止めとしての効果もどの位のものか楽しみです。
予防医療も日々進歩しています。犬猫の病気でまず予防というとワクチンが挙げられますが、飼い主の皆さんは今年病院で何種ワクチンをうってもらったかすぐ答えることができますか?自分が横浜で獣医師として働き始めたころは猫のワクチンといえばは3種というのがほとんどでした。ところが最近では5種というワクチンが発売されているようです。
猫の5種ワクチンについてなのですが、ウイルス性鼻気管炎・汎白血球減少症・カリシウイルス・猫白血病・クラミジアの5つを予防するものが含まれています。猫白血病自体、外に出ることなく室内飼いであれば白血病に感染する機会は非常に少ないものとなり、接種前には必ず感染の有無を知るための検査が必要なワクチンでありますから、簡単には5種のワクチンは選択できません。また、鼻炎の原因菌であるクラミジアについてもワクチンで予防しなければならないようなものとも考えがたいのも事実です。病院の経営上は複数種のワクチンの方が金額を請求しやすいのですが、各々の飼育状況により必要なワクチンの種類は異なってくるのではないでしょうか。5種ワクチンを否定するわけではありませんが、飼い主さんが知らないのを良いことに高いワクチンをうつようなことはしたくないものです。
“体のほとんどは水分からできている”何かの宣伝のキャッチコピーのようですが、その水分でもある血液の量は果たしてどの位かご存じでしょうか?犬では1㎏あたり約80㏄、猫では1㎏あたり約70㏄といわれています。これは体重の1/12〜1/13の量となります。気になるのは手術や怪我などによってどの位の血液が体内から喪失した場合、命に関わってくるかということではないでしょうか?例えば体重が20㎏の犬の場合、1600㏄が血液の総量だとするとその半分である800㏄を喪失すると生命を脅かす状態となります。(肥満犬ではこの数字はあてはまらないでしょう!)
手術前に血液検査をするのは、肝臓や腎臓の機能が正常かどうかを確かめる意味もありますが、現時点での血液量がどのくらいのものかということを確かめるものでもあるんです。
昼間は元気だったペットが夜になって急に調子が悪くなることは決して珍しいことではありません。状態によっては明日まで様子をみても平気なものとそうでないものとがあります。当院は24時間体制ではありませんが、カルテのある患者さんに限って可能な限り対応させていただきます。
PM10時以降(日曜・祝日はPM8時以降)は留守番電話になっておりますが、必ずカルテ番号とお名前、症状をメッセージにお残しください。折り返しご連絡差し上げます。尚、10分以上連絡がない場合は申し訳ありませんが、他の救急対応病院にご連絡ください。
日頃、肥満=脂肪という具合に悪者にされがちな脂肪ですが、体内では脂溶性ビタミンの吸収を良くしたり、食べ物の嗜好性を高めたり、必須脂肪酸の供給源としてなくてはならないものなのです。特に必須脂肪酸は細胞を構成する成分として欠かすことのできないものであり、不足してしまうと成長不良や運動機能の低下、繁殖機能の低下さらには被毛の状態を悪化させたりふけ症の原因になります。
無闇なダイエットで脂肪を制限してしまうことで体内の代謝を変化させてしまいます。どんな脂肪(油)にどれだけ必須脂肪酸が含まれているかといったところまで気を遣わないとダイエットが思わぬ病気を引き起こしてしまうことがあります。人のダイエットも犬猫のダイエットも正しい知識が必要ですね!
睾丸(精巣)が生後2が月の段階で陰嚢(精巣2つが収まっている袋)に降りていない場合、これを陰睾といいます。睾丸は熱に弱い臓器のため陰嚢に収まり極端な熱の上昇からその組織を守っているわけですが、陰嚢内に降りきることができずに腹腔内(お腹の中)あるいは鼠径部(太ももの付け根)にあると、萎縮してしまう場合もありますが腫瘍のように大きくなってしまうこともあります。
今日はチワワの手術をしたのですが、飼い主さんが去勢を希望されたので去勢手術となりました。どこまで精巣が降りてきているかによって手術の難易度が変わりますが、写真のように鼠径部(鉗子で示している所に精巣が隠れています)にまで降りてきていれば陰嚢内に収めてあげることはそんなに難しいことではありません。雄犬で精巣が1つしかない場合は早めに診察を受けましょう。そしてなるべく早めにどちらかの手術をすることをお勧めします。(※陰睾は子犬に遺伝しますので交配はしないでくださいね。)
やはりダックスは人気があります。ペットショップを覗いてみても、ダックスのショーケースの前には必ずといって良いほど興味深そうに眺めている方がいらっしゃいます。かれこれダックスの人気もここ5年くらいは続いているでしょうか?一般的にいろいろな病気が確認され始めるのは7〜8歳を過ぎてからが一般的なのですが、ダックスについては5歳ぐらいの年齢は運動量も活発なせいか腰を痛めてしまう子が多いように思われます。半導体レーザーなどによる理学療法で回復する子もいれば、外科的にヘルニア部を処理してあげないと回復できない子もいます。
実は、明日も腰を痛めてしまったダックスのヘルニアの手術が控えています。この子もやはり5歳で、症状は突然現れました。手術をして1日でも早く歩けるようにがんばろうね!(手術の際には写真のように背中の毛をバリカンでカットしてしまいます。)
2ヶ月ほど前に心臓病で愛犬のシーズーを亡くした老夫婦がいらっしゃったのですが、その時はだいぶ落胆されており私も“もう犬は飼わないのだろうな”と思っていました。そのことも忘れかけていた今日の午前中、その老夫婦が新たにワンちゃんを連れて来院されました。嬉しそうに抱きかかえたその腕の中には小さなシーズー犬がしがみついていました。
1度大切なペットを亡くされてしまうと、次はペットを飼わない方や、前のペットのことを思い出してしまうので病院を代える方もいる中、“また先生のお世話になるよ!”といって来てもらえることは非常に嬉しい限りです。こういう気持ちはいつまでも忘れてはなりませんね!
予定日より2日ほど早くダックスの赤ちゃんが生まれました。破水してしまったのが昨晩の9時頃で子犬が出てくる気配がないようなので帝王切開となったのですが、母子ともに状態も良好で本日の朝10時に自宅へと帰られました。夜のお産でちょっと辛いのは、生まれた赤ちゃんにお乳をあげなければいけないことです。帝王切開だとお母さん犬が“産んだ”という意識がすぐにでないようでなかなか子犬の世話を始めてくれないため、母乳と交互に人工ほ乳をまめにしてあげなければならないんですね。
お産に際して毎回思うことですが、獣医側と飼い主さん側との連携があってこそ無事にお産を終えることができると思います。もしも“お産かな”と思ったら必ず1度は病院に行き、何が起こっても良いように獣医さんとお話ししておいてくださいね。駆け込みのお産だけは困りますから・・・。
犬猫のワクチンとは感染症から体を防御、あるいは症状を軽減するために使用されるものです。けれどもワクチンというものは必ずしも安全なものではありません。と、そんなことを書いてしまうと皆さんワクチンを打たなくなってしまうかも知れませんが、ワクチンを打たれた体の中では免疫力を上げようとするために様々な反応が起こっています。このときにワクチンに対して反応が敏感な子では“ワクチンアレルギー”というものが起こります。この症状は様々なのですが、顔が腫れてしまったり、食欲が無くなってしまったり、動かなくなってしまったりする場合があります。このような状態がワクチン接種後数分から丸1日続いてしまうことがあります。あまりにも症状の激しいものではアレルギーを治めるための注射を打つことになりますが、ワクチンを打った後には上記のような症状が出ることがあることも知っておいてくださいね。(もし、症状が現れてしまった場合は必ず病院で診察を受けてください)
診察していないときは受付に座って左のような風景を見ていたり、カルテの整理や参考書を読んだりしていることがほとんどなのですが、ふと目線を上げてみると当院の裏に控える八幡山公園の葉っぱが赤や黄色に色づいていることに気づきました。一日のほとんどを室内で過ごしていると、今日は暖かいのか寒いのか、ジメジメしているのか乾燥しているのか解らないときがあります。診察中に会話の中で“今日は暖かいデスねー。”なんて飼い主さんに言われてはじめて今日が暖かいことに気がつくこともありました。
私たち獣医師の仕事は目先の病気を治すことばかりに気をとらわれがちですが、気候の変化を感じ取って“そろそろこんな病気が流行り出すかな?”なんてことも患者さんにお知らせできるような感性を磨かなければなりませんね。
BUN(Blood Urea Nitrogen)とは日本語訳すると“血液尿素窒素”というもので、BUN値の上昇は一般的に腎臓の機能の低下を表すものですが、BUN値の低下でも腎臓の機能の低下を表しています。健康診断などでは、意識として何となく数値の高いものばかりに目がいってしまいがちですが、数値が低いところに思わぬ落とし穴があることがあります。一般的にBUN値が高くなってしまう原因としては腎臓自体の機能の低下であったり、尿路(おしっこが通過する管)の問題だったりします。反対にBUN値が低くなってしまう原因としては多飲多尿(尿素の喪失)であったり、尿崩症であったり、腎盂腎炎であったりと、これまた腎臓の機能異常で起こっています。もう一つのBUN値低下の原因としては極端なタンパク質の制限食の給餌、それと慢性的な肝機能不全があります。
検査の値についてわかりやすく説明しようとすると値が“高いか低いか”ということになってしまうのですが、数値が高くなかったからといって安心はできないということを覚えておいてくださいね。
9月12日に脊椎の手術をしたダックスが久しぶりに来院されました。脊椎の手術は術後にすぐに歩き出してくれる子もいれば、なかなか自力では歩くことができずに長い経過をとる子もいます。この子もレーザーやジャグジーバスによるリハビリ、さらには自宅でのリハビリを重ねたことで、だいぶ自力で歩くことができるようになりました。すぐに結果が判る手術もあれば、このようにある程度の経過の後結果が判る手術もあります。どんな手術でも全てが良い結果をもたらすとは限りませんが、脊椎の手術は歩けるようになることで手術したことが良かったと思える手術です。
けれどもこの結果をもたらしたのは手術したということだけではなく、飼い主さんのリハビリに費やした日々の努力の賜物だということを忘れてはなりませんね。
一度は耳にしたことがあるのではないかと思いますが、簡単にいうと犬の“のど風邪”みたいなのもです。原因としては、犬アデノウイルス2型、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスなどのウイルスと気管支敗血症菌やマイコプラズマなどの細菌によって引き起こされるものです。ここでウイルスがどうだの細菌がどうだのと難しい話は抜きにして、どうして感染してしまったかということが気になるところでしょう。
1番の原因には感染犬との接触(ペットホテル・トリミング・ドックショー・動物病院etc)があげられます。基本的には上に挙げたウイルスはワクチン接種をしていれば予防できるものです。けれどもストレス状態にさらされていたり、病気の治療中であったり、ステロイド剤を服用中であったりと体の抵抗力が低下している時にはどうしても感染してしまうケースがあります。空気が乾燥するこれからの時期、ワクチンをうって免疫力を高めることも大切ですが、少しでも元気が無さそうなときには犬がたくさん集まるところへ行くことは避けることが得策ですよ。
人が手術するというということになると、年齢によっても異なりますが様々な検査が行われます。これは事前に体の状態を観察するということでもありますが、万が一起こりうる事故の可能性を察知するということでもあります。それと比較すると動物に対しての手術(麻酔)に対しての認識はあまり高くないのが現実ではないでしょうか?あまり怖がらせるようなことを書いてしまうと麻酔をかけることに対して臆病になりすぎてしまう方も増えてしまいそうですが、体の仕組みは人も犬も猫もほとんど変わりがありません。それなりの検査をし適切な麻酔を選択するためには準備が必要です。
今でも当日おなかいっぱい朝食を食べた状態で、“今日、手術してください!”と来院される飼い主さんがいらっしゃいます。一般の方が麻酔について分からないのは当然ですが、せめて事前に電話を1本かけてもらえることを望みます。
先天的なものあるいは脳障害などによって起きる発作のことを“てんかん”と言います。てんかん発作は、意識を失うことはありませんが自分では制御できないような振戦(ふるえ)や筋肉の硬直のため自由がきかなくなってしまいます。てんかん発作は日に何度も起こることで、脳神経や全身に何らかの併発症を起こしてしまい命を脅かすこととなります。そうしないためにもてんかん発作はお薬でその症状を抑えなければなりません。
代表的な薬としてフェノバール(抗痙攣薬)というものがあります。症状がひどい場合には注射によって投与することになりますが、ある程度症状が落ち着けば飲み薬として与えることとなります。けれどもこの薬は痙攣を抑えることも可能ですが平常時の動物の活動性(元気な様子)を少なからず低下させてもしまいます。けれどもてんかん発作が日に何度も続くことの方が命に関わってしまいます。もし発作持ちのペットを飼われている飼い主さん、元気がなくなってしまう様子を見るのは辛いことですが、お薬は病院の指示通りに与えてくださいね。