飼い主さんが“何か様子が変!”と言うからには必ず何か異常があるはずだと思っています。しかしながら、いかにいろいろな検査をしてもこれといった異常が発見できないこともあります。そんなとき必要になるのは、飼い主さんからの日常生活の話や最近あった出来事、例えば親戚の子が遊びに来たとか、雨だったのでいつもより散歩が少なかったとか、ほんの些細なことなのですが答えを導き出すことができるヒントが隠されていることがあるんです。
病気を治すものというと注射や薬がばがりが注目されがちですが、もっと大切なものは日常の食生活だったり、運動量だったり、精神状態だと思います。ストレス社会と言われる現在、毎日気ままに生きているかのように見えるペットたちも私たちが気付かないだけでストレスから病気になっているかも知れませんね!
耳をかゆがっていているのに気づき、ちょっと覗いてみると“真っ黒”なんてことはよくありますよね。黒い汚れくらいでたいした炎症がなければ治療することで良くなります。けれどもこれに気づかず放置してしまうと、外耳炎から中耳炎さらには前庭疾患にまで症状が進行することがあります。また、耳道(耳の穴から鼓膜まで)の付近には顔面神経という顔の表情や瞬きを司っている神経も通っているため、耳道に炎症が起こると顔面神経麻痺を起こしてしまうこともあります。
ちょっとした病気でも気がつかなかったり、放置してしまうことで思わぬ大きな病気にしてしまうことがあります。特に外耳炎では進行してしまった前と後では治療に掛かる日数も体力的負担も変わってきます。耳の中の変化にはよく注意してあげてください。
久しぶりに難しいタイトルです。このタイトルをみたとき、理解できた飼い主さんは非常に勉強熱心なんでしょうね。これは椎間板ヘルニアが起きやすく脊椎神経に何らかの異常が生じやすい犬種のことなんです。椎間板ばかりが取り上げられがちですが、各関節の軟骨にも同じことがいえるのです。さてこの軟骨異栄養犬種といわれている犬種とは何でしょう。代表的なものは、ダックスフンド・ビーグル・ペキニーズ・コーギーなどが挙げられます。基本的にはある程度年齢(8歳過ぎ)がいってから起きる椎間板疾患ですが、これらの犬種には年齢は関係ありません。早ければ3歳位に発症してしまうケースもあります。
予防することはなかなか難しいのですが、まず太らせないこと。そして成長期には適切な栄養を取らせることが大切ですね!
新しい家族としてペットを迎え入れると、何かと手を焼いてあげたくなってしまうのは仕方がないことだと思います。けれどもこの“度”が過ぎてしまうことで大変なことが起こってしまうのです。一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、“分離不安定症”と呼ばれるもので、常に一緒にいることでペットは特に世話をしてくれる人に対して精神的に依存する割合が高くなってきます。けれどもその人がそばにいなくなったり、自分の思うようにならないことで病気になってしまったり、ソファーやスリッパなどを破壊してみたりと、思うようにならない怒り(?)の矛先を違ったもので発散しようとします。さらには一人で留守番させられようものなら、家族の誰かが帰ってくるまで吠え続けるようなこともあるようです。これとは反対に、人には“ペットロス”というものがあり、亡くなってしなったペットのことを忘れられずに精神的に立ち直れなくなってしまう方もいます。
お互いに思いやる気持ちは大切なことだと思います。けれどもお互いに依存しすぎることは何かあったとき大きなダメージを受けることとなります。人とペットの適度な距離感こそが楽しい時間を与えてくれるのではないでしょうか?
“かわいいあなたの家族のために・・・”などといっても動物病院は商売です。ご近所の動物病院の先生と仲良くできるかというと、商売仇な訳ですからそうもいかないことがあります。けれど幸いにも自分には宇都宮市内でお互いに意見交換やものの貸し借り、手術などどうしても手が足りないときに手を貸してくれる先生が3人ほどいらっしゃいます。先週の木曜日には埼玉の本庄市にある動物病院の先生のところで膝蓋骨脱臼の手術をしてきたのですが、こちらの先生も自分の知識を出し惜しみすることなく教えてくださるし、年下の私の意見も素直に取り入れてくれます。
自分もこれから先何年病院をやっていても、経験していないことや一人で判断するには難しいことがあるはずです。そんなとき素直にその筋に長けている先生の意見を聞くことができたり、協力を求めることができる先生がいるということは大きな財産だと思っています。このような関係をもっと広め、患者さんに還元できれば何よりなんですけど・・・。やっぱり難しいかな?
現在登院では、来院された患者さんのほとんどを私が診療させていただいております。そんなに規模が大きいわけではなく、来院数もさほど多くないので何とか一人でこなすことができています。このこなすというのは、患者さんの受付から始まり→診察→検査→治療あるいは処置→薬の処方→会計という流れです。この流れでいくと多くて1日10件の患者さんをみるのが精一杯な状態です。自ら限界を決めてしまってはそれ以上の進歩は望めないのですが、患者さんから状態をよく伺い、できる限り見落としの無いように診察し、症状や病気のことをよく説明・理解してもらって帰っていただくには最低でも1時間弱は掛かってしまうからです。
少しでも診察の流れをスムーズにするべくこれから少しずつシステムを変えていかねばと思っています。それは受付のシステムであったり、診断機器であったり、スタッフであったり・・・。とりあえず、何から手をつけるべきかなぁ?
生き物ですから何が起きるかわかりません。散歩中に交通事故にあったり、何かを拾い食いしてしまったり、仲の悪い相手と喧嘩してしまったりと不慮の事故というものはいつ襲いかかるかわかりません。このような出会い頭の事故は別として、何らかの持病があり、その症状に対しての薬を飲んでいるにもかかわらず、薬を飲ませる前の状態であったり(さらにひどい場合)しても2〜3日様子をみてしまう方がいます。以前にも何度かEntryしたことがありますが、人と犬猫とでは生物学的速度(1日が4〜5日に相当)が違います。この2〜3日が命取りになることがあります。
“先生救急なんですけど”といわれて来院される方に限って、意外と様子を見すぎて救急症例にしてしまっていることが多いんです。獣医医療はどうしても治療が後手に回ります。後手に回らないようにするためには様子を見すぎないことが大切ですよ!
以前は結構太っていた猫が急に痩せたということで来院され、検査してみると血糖値が正常値をはるかにオーバーしていました。このまま高血糖状態が続くと危険なので血糖値をコントロールするために入院を勧めました。猫の糖尿病は診断がついた時点で50〜70%がインシュリン依存性(インシュリンを注射しなければならない状態)の糖尿病だといわれています。早速インシュリンにより血糖値のコントロールを始めたのですが、入院のストレスも関係しているのかなかなかコントロールするのが難しく退院できるまでにはもうしばらくかかりそうです。
猫に限らす犬にも糖尿病はあります。症状は全く人と同じであり、インシュリンを飼い主さんに1日1〜2回打ってもらわなければならないこともあります。人以上にコントロールの難しい犬猫の糖尿病、肥満傾向のペットを飼われている方は要注意ですよ!
犬猫に限らずペット好きの方は、余裕さえあれば何頭でも飼いたいと思われるようです。また余裕はなくても動物好きの人には自然と動物を寄せ付ける何かがあるようで、知らないうちに頭数が増えていたという方もいらっしゃいました。けれども物言わぬペット、病気を発見(できれば早期に)するということになると頭数は多ければ多いほど難しくなります。誰かが血尿をしているとしてもし2頭以上ペットがいるとするとあなたはすぐに判別することができますか?万が一、1頭でも伝染性の病気に罹っているとしたらば他に伝染してしまうことはたやすいことです。
ペットを飼うことは心が安らぐことだと思います。また身寄りのない犬猫を世話することはさらにすばらしいことだと思います。けれども面倒をみるからにはそれなりの責任が発生してきます。飼う側としての心構えをしっかり持ってくださいね。
午前中は雨や風もさほど強くなかったためか患者さんがいらっしゃいましたが、さすがに午後のこの風雨では相当の重傷でもない限り病院には患者さんも様子を見てしまいますよね。今回のような強力な台風が通り過ぎる前と後では気圧もだいぶ変化します。健康な子でも低気圧の時は少々おとなしくなるようですが、てんかん持ちの子や水頭症を持っている子ではこの気圧の差が発作を引き起こしてしまう可能性があります。病院からお薬をもらっている子や常備薬として何らかの薬(グリセリン系のもの)を持っている場合はこんな時こそしっかり飲ませてあげてください。てんかんや発作はいかに起こさないように、あるいは起きたにしても軽く済ませてあげることが大切です。たかが気圧、されど気圧!天気図は要checkですよ。
冷たい雨が降り続いた昨日とはうって変わって、ちょっと動くと暑かった今日ではありますが大分過ごしやすくなりました。異常な暑さと湿度をもたらしたこの夏は、犬猫の生活にも影響しました。そう、皮膚病です。健康な状態の皮膚にも細菌は潜んでいますが、これらの細菌はある意味バリアーとして働いてくれます。けれども様々な変化によりこの細菌バランスが崩れることで皮膚病を発症していきます。
個人的にこの夏の皮膚病に効果がみられた抗生物質がこの“ゼナキル”でした。他の抗生物質ではなかなか効果がみられなかった皮膚病も“ゼナキル”では症状の改善が速やかに認められました。少々単価は高いのですがお試しになってみると良いかもしれません。
乾燥のドックフードなどではまず心配ないのですが、ジャーキーやガムのようなもしかしたら一口で飲み込めてしまうようなおやつは食道に詰まったり、なかなか消化できずに胃に留まってしまうことで嘔吐や消化不良を起こしてしまう可能性があります。特に食道に詰まってしまった場合は、胃に落とし込むか特殊な鉗子で引っ張り出さなければなりません。どちらにしても飲み込んだ当の本人は非常に苦しい思いをしてしまいます。
食べるということは動物の本能です。食べている最中に周りが騒がしかったりすれば取られないよう早く食べてしまおうと思うに違いありません。そんなときには必ずと言っていいほど事故が起こりやすいのです。特に飲み込めそうな大きさになったジャーキーやガムには注意してあげてくださいね。
病気になると、“どうしてこんなに急に!”と思われる飼い主さんが多いようですが、決して急ではないのです。ほとんどの場合、病気が病院で発見されるのは大分症状として進行してからなんです。特にこれからの時期見逃しがちなのは“咳”ではないでしょうか。8歳を過ぎた犬猫が咳をしだしたとしたら心臓を患い始めた可能性があります。特に小型犬種では心臓病の中でも“僧帽弁閉鎖不全”という状態に進行していることがあります。このような状態で咳をし続けていては肺炎〜肺水腫、そして重篤な場合は命に関わる場合があります。寒くなってきました。今している咳が命に関わることもあります。この時期の咳は早めに病院で診察を受けてくださいね。
夏は嫌いではないのですが、冬に生まれた自分にとっては今年の異常なまでの暑さはきついものがありました。涼しくなって喜んでいるのは人間ばかりでなく犬や猫も同じかと思いますが、ここにきて夏の疲れなのか体調をこわして病院にいらっしゃる飼い主さんがいらっしゃいます。どうやら少しずつではありますが風邪が流行りつつあるようです。人間が体調をこわすくらいですから、8歳を越えた犬猫でもおなじことが言えると思います。去年までは平気だったこともこの夏の異常な暑さで、飼い主さんが思われている以上に体力を消耗していることもあります。ある地方では大雨のせいで水害がありましたがこのような年には疫病が流行ることもあります。これから冬にむけて万全の体調管理で過ごしたいものです。