日本は昔からの風潮で“出身大学”を重視する人が未だに多くいるようです。名の通っている大学を卒業したならば、何でもできると思われている方がいらっしゃるようです。まず、大学を出て国家試験を通ったばかりの獣医はどの大学出身者でも何もできないでしょう。(もちろん所属していた研究室が臨床系ならば少々のことはできますが・・)私が偉そうに言えることではないのですが、大学の6年間では国家試験に受かる勉強ばかりで、臨床実習に費やす時間ははほとんど無いからです。問題はどの大学を卒業したかではなく、卒業後に何処(個人病院or大学病院or海外)でどんな勉強(修行)をしてきたということではないでしょうか?“あそこの先生は〜大卒業だから。”といった観点では病院選びの指標にはならないと思いますよ!
これって私たち獣医でも判断が難しいことがあります。明らかな原因があっての症状であれば、軽い吐き下痢くらいならば様子を見ても良いかもしれません。けれども原因もわからない吐き下痢では、症状の進行もこの先の様子も予測することは難しくなります。自分は病気のことを“火事”に例えることがあります。小さな火事ならば消火(治療)も回復も速やかに進みますが、大火事となると仮に消火できたとしてもそのダメージは大きなものとなります。ちょっとおかしいかな?と思われたらかかりつけの先生に相談してみてください。様子をみすぎて大火事にしないように!
ありませんか?これが瓜実条虫というもので、犬猫での感染率は30〜50%といわれています。ほとんどの場合が無症状ですが、犬猫がしきりにお尻を気にして床にこすりつけるような症状がみられたら、肛門の周りあるいは便をよく見てみてください。
瓜実条虫は駆虫薬で治療することができますが、これからの時期ノミやシラミ対策が予防につながります。シーズンインを前に充分な対策をとりましょう!
初めて病院に来られる方、あるいは久しぶりに病院に来られる方で“実は前の病院で〜でした。”ということをなかなかお話ししていただけないことがあります。確かに打ち明けにくいこともありますが、処置や薬を処方するにあたりこれが非情に大切なことなのです。例えば“〜にアレルギーがある。”とか“心臓病で〜という薬を処方されている。”など処置や薬の処方に大きな差がでます。
“先生(前の先生にも)に悪いと思ってなかなか言えませんでした。”という方がいらっしゃいますが、治療をスムーズに行うためにもどんどん話してください。少しでも疑問に思うことがあれば詳しく説明させてもらいます。少しでも早く病気を治していくことに専念しませんか?
昨日は休みを利用して横浜のみなとよこはま動物病院と、大学の同期生が開業したので病院見学に行って来ました。みなとよこはま動物病院は相変わらず忙しく、設備もさらに充実していました。正直、行くたびに何かしら変化があるのには驚きです。また勤務していた頃の患者さんとも会うことができ楽しい時間が過ごせました。
大学の同期生は横浜の青葉台駅の東急スクエアという駅ビル?内にテナント形式で開業したのですが、非常にきれいな病院にはビックリしました。これからはこのような形式での開業が増えるのでしょうか?何にしても友達の開業はうれしいことです。是非、ご近所の方は行ってみてくださいね!
19日より研修に来ていた実習生が、今日で病院実習を終えました。まだ専門学校の1年生でしたが専門的な知識も身に付いており、理解力もありこれから先が楽しみです。私たち獣医も患者さんにとってもそうですが、自分にあった病院あるいは自分のためになる病院を見つけるということはなかなか大変なことだと思います。良い病院を見つけられるようこれからもがんばってくださいね!
雨降る寒い一日。今日は静かな午後を過ごせるかな?と思っていたら、1本の電話で事態は変わってしまいました。1歳のゴールデンレトリバーが台所で洗い物に使うスポンジたわしを飲んでしまったとのこと、急遽、来院してもらうようにお話ししました。当の本人は満足そうにケロッとした顔をしていますが、レントゲンをつったらそのままの形でスポンジたわしが写し出されました。早速、当院秘伝?の催吐剤で吐かせることにしたのですが、なかなか我慢強く吐こうとしません。これは参ったなと思っていたらフードとともに青い物体が・・・。処置開始から1時間弱、これに懲りて変なものは食べちゃだめだよ!
パグやシーズーではどうしても他の犬種に比べ目が出ているため写真(目の中心付近に傷があります)のようなケガをしやすいのです。散歩中に植え込みのなかへ元気に入っていって出てきたらば目をショボつかせていたなんてことは良くあることです。写真のパグ犬はまだ症状が軽い方ですが、目の傷はその程度によっては視力を失ってしまうこともあります。お散歩中には特に気をつけてあげてくださいね。
整形外科というと手術のことばかり注目されますが、術後のリハビリが手術以上に大切なことを飼い主の皆さんにお知らせしたいと思います。“手術は治療の20〜30%。残りの70〜80%の術後の管理が大切!”とはみなとよこはま動物病院院長、永岡勝好先生の言葉です。いくら素晴らしい手術を受けても術後すぐに激しい運動をしてしまったり、傷を舐めて感染を起こしてしまったらせっかくの手術も台無しになってしまいます。リハビリをするにあたっても適切な運動量と疼痛管理をしなければ速やかな回復は望めません。
当院では写真にある半導体レーザー治療器(オサダライトサージ5000V)にて、組織に損傷を与えず術前術後の筋肉や関節の痛みを和らげる治療を行いながらリハビリを行っています。このレーザー治療は、股関節形成不全やレッグペルテスによる股関節の痛み、椎間板ヘルニアの痛みなどその用途は非常に幅広いものとなっています。何らかの痛みを抱えているペットを飼われている飼い主の皆さん、少しでも痛みを緩和させながら治療してみませんか?
1週間の予定で、動物看護士の勉強をしている実習生が手伝いに来てくれています。ちょうど入院もあり、手が欲しかったときなので非常にありがたい限りです。学校では学ぶことができないことを実習中に経験させてあげられればよいのですが・・・。1週間かんばってくださいね!
人医療ではだいぶ前からペインクリニックというものがあり“痛み”ということに対して積極的に取り組んでいます。最近になって獣医医療でも“痛み”について注目されるようになってきました。規模の大きな動物病院では大きな手術の後には必ずモルヒネ(麻薬ですが医療用として認められています)を使ってペインコントロールをしている所もあります。術後に限らずペインコントロールが必要となる現場はたくさんあります。最近では痛みのコントロールにNSAID(非ステロイド系消炎鎮痛剤)という非常に効果のある薬のおかげで、様々な痛みを持つ動物が解放されてきているようです。
ここで大切なのは、私たち獣医が患者さんに対して痛みの原因やその病気に診断をくだしてあげることではないでしょうか“痛みはなくなったけど病名がわからない?”なんてことにならないように・・・。
腎臓の働きのなかで一番大切な働きは、体内の不要な代謝産物を尿という状態で体外に排泄することです。この働きが失われると、一度は耳にしたことがあると思いますが“腎不全”という状態に陥ってしまいます。尿が詰まって起こる急性のものではある程度回復する見込みがありますが、老化などによって腎臓の細胞自体に問題が起こる慢性のものでは回復は非常に難しいものとなります。
治療もヒトでは“人工透析”という方法がありますが、血液量の少ない犬猫ではなかなか透析といった治療方法はとれず“点滴”という方法が主体です。点滴も個体差はありますがある程度の周期で通院しなければなりません。治療の到達点が低い腎臓病、飼い主にとっても獣医師にとっても何とも歯がゆいものです。
“骨はどのようにして伸びているかわかりますか?”と飼い主さんに質問してみるとほとんどの方が“骨の真ん中のところが伸びる”という答えが返ってきます。何となく骨の真ん中のところが伸びそうですが、実は骨の両端にある軟骨(骨端軟骨)の部分が骨を伸ばしていくんです。骨が成長するのにはこの軟骨が非常に大切で、この軟骨に問題が起きると様々な骨の病気(股関節形成不全・レッグペルテス症etc.)が起こってしまいます。
骨は部位によって成長が止まる時期が異なりますが、成長期にあまり激しい運動をすることでこの軟骨をつぶしてしまうことがあります。体が大人になるまで(およそ10ヶ月)は運動させるのも無理ないところで抑えておいた方がいいですよ!
飼い主さんの希望でぎりぎりまで帝王切開せずにがんばっていた黒パグのまるこちゃんでしたが、予定日がきても分娩の兆候が見られなかったため飼い主さんの同意を得て手術させてもらいました。前回のお産では自然分娩でしたが,今回は5匹の赤ちゃんもお腹のなかで大きくなれるだけなったようで、手術して正解でした。見てのとおり黒パグの赤ちゃんが4匹、フォーンの赤ちゃんが1匹でした。『ちなみに今回は赤ちゃんの飼い主は決まっているので里親の募集はありません!』
同じ病名でも年齢や性別、種類(犬あるいは猫、さらには犬種)によって症状も異なれば治療方針も異なります。“この病気にはこの治療を!”といった型にはまった治療しかできないと治療に行きづってしまうこともあります。老齢の犬猫に若い犬猫と同じことをしてもかえって負担をかけてしまうこともあります。とても性格的に入院できなそうな子を無理に入院させても治療効果が上がるとは思えません。やはり1頭1頭体に触れ、飼い主さんから日頃の状態を聞いた上で治療方針を決めて行かねばならないと思います。もちろん自分も“こうしていれば良かったかな”ということがあります。やはり治療に対しての感性(柔軟性や応用性など)というものは一生を懸けて磨いていくものなのですよね!
血液検査などで何らかの異常が発見されると、その状態を改善するために治療を開始するわけですが、今の症状の原因とその検査結果が結びつかないこともあります。特に飼い主さんにとってそのことを理解して頂くのは難しいことと思います。例えば、腎臓の数値が高いということでもおしっこが出なくて高くなっているのか?それとも加齢によって腎臓への循環血液量が少なくなって高くなっているのか?ただ食後のために高くなっているのか?などその状態次第では治療方針も変わってきます。
“この薬を飲めばこの数値は低くなります。”と言われれば飼い主さんは何の疑問もなくその薬を飲ませますよね。けれどもその数字を下げるためだけに気を取られ病気の本体を治療しなければ何の改善もありませんよね。うわべの病気を治すことはそう難しいことではありません。けれども病気の本質を理解してもらい少々時間がかかるかもしれないけれど“本当の原因”を治療していくのが獣医師の使命ではないでしょうか。
今日から黒パグのまるこちゃんがお産のため入院しました。2度目のお産とあってまるこちゃんは何となく落ち着いた様子。けれども大きなお腹のなかには5匹の赤ちゃんを身ごもり、皆順調に成長していました。まだまだ体温も高いため、お産が始まるのは早くても明日以降になりそうです。さあ明日から気が抜けない日々が続く!がんばらねば!
膝蓋骨脱臼(膝のお皿の骨が内側あるいは外側に外れてしまった状態)が小型犬種に多いのは皆さんご存じのことかと思います。大型犬の股関節形成不全と同じで遺伝的素因が大きくからんでいる病気です。今日は他の病院からの依頼で夕刻より脱臼の整復手術を行います。この脱臼の手術方法はいろいろな方法があるのですが、その選択は非常に難しいものとなります。幸いにも私は日本でも屈指の整形外科医である永岡勝好先生のもとで、特に膝蓋骨脱臼の手術には100症例近い手術に立ち会うことができ手術のノウハウを得ることができました。(もちろん自分で全てをこなすようになってはまだまだ症例は少ないですが・・・)
“脱臼を直すことは器用ならば誰でもできる。けれどもそのメカニズムをしっかり理解していなければ本当に直すことはできない。”とは永岡先生の言葉です。それを肝に銘じ手術に挑んできます。
ということでカエルにまつわるお話しをしたいと思います。“カエルは動物病院には関係ないだろう”と思われるでしょうがカエルが原因で起こる病気があるのです。その名も【ヒキガエル中毒】です。冗談みたいな名前ですが獣医の専門書にはちゃんと項目があるんです。これはヒキガエルが耳下腺から出される防御毒によって異常に唾液を流したり、興奮したり、場合によっては虚脱(倒れてしまう)してしまう場合もあります。
命に関わるようなことはありませんが、這い出てきたカエルでペットが遊んでいる姿を見かけたらすぐにやめさせてくださいね。これからの時期以外と注意ですよ!
自分が子供の頃はまだ野良犬が多く、病院うらの公園で野良犬が生んだ子犬を同級生と世話をしに行ったことがありました。そのころ飼われている犬というとほとんどが雑種で、純血系の犬はなかなか見かけないものでした。実際、獣医になって患者さんが連れてこられる犬を見るとほとんどが純血種で、雑種の犬はまず見かけなくなりました。(自分が小さい頃飼っていた犬も雑種でしたが病気知らずで、今思えば獣医さん泣かせの犬でした。)
私の個人的イメージでは野良犬というと雑種(雑種を飼われている方、すみません。)なのですが、地元の別荘地では純血種の犬が誰に管理されているというわけでなくうろうろしているとのこと。聞いてみるとどうやら全てではないけれど別荘のオーナーさんが飼いきれなくなって放してしまっているようです。飼えなくなったならば捨ててしまうといった気持ち、皆さんどう思われます?
国家試験に受かり獣医師免許をもらった時から“先生”と呼ばれることになるのですが、これは名誉であることでもあり、ある意味普通の人ではなくなったようなプレッシャーがあります。特にヒトのお医者さんではなおのことだと思います。このプレッシャーというのは命を預かることに対してのものであったり、より良い医療を提供できるように日々勉強しなければならないということであったり、挙げ始めるときりがないくらいです。
けれども“先生”と呼ばれることにふんぞり返り、患者さんに対して心ない態度をとり、勉強することをやめてしまい、漫然と日々を過ごされている方もいるようです。やはり“先生”と呼ばれる仕事を続ける限り毎日が修行であり、常に謙虚にいきたいものです。
ワクチンは生後60日までに1回目、その後1ヶ月後に2回目、さらにはその1ヶ月後に3回目のワクチンを接種し、それ以降は1年に1回追加接種ことが一般的です。(当院では幼齢期のワクチン接種は2回)けれども米国での論文に“毎年のワクチン接種は必要なし。”というものがありました。というのはワクチン自体の効果の向上と、ワクチン接種後の1歳以降では野外での自然免疫を受けることができているためだということでした。ということはワクチンは接種しなくても良いのでしょうか・・・
この論文では“ワクチン接種後1年以降、免疫力を維持できているのは90%”というデーターが付け加えられていました。ということは残りの10%は免疫力が低下しているということでもあります。私、個人的な意見としてはワクチンは毎年接種していたほうがbest!だと思います。(動物病院としては正直な話、ワクチン接種で得る収入は大切ですし・・・)免疫力が維持できているかどうかは抗体検査というものでcheckできますが、場合によってはワクチン代よりも高く付いてしまうこともあります。“1年に1回の接種で免疫力が維持でき伝染病から身を守ることができるならば・・・”飼い主の皆さんはどう思われますか?