blogを使ったホームページを開設して2ヶ月が経ちました。公のところに文章を書くにあたって今まで日常の臨床現場で気にしなかったことも、改めて調べなおしてみると発見があったり間違えに気づいたりと自分にとっても勉強になっています。またコメントでは皆様からの生の声を聞かせて頂くことで明日への励みになっています。
明日から10月、そしてホームページも3ヶ月目に突入します。これからも役立つ情報や獣医から飼い主さんへの本音のメッセージを提供できるようがんばっていきますので、皆様からのご意見や質問をお待ちしています。
なかなか治りにくい黒くベタベタした耳の汚れ、原因はマラセチアという酵母菌が原因のことがあります。ちょっと見た目にはただの外耳炎ぽいのですが、治療しているにもかかわらずなかなか効果がみられない場合にはこれを疑った方がいいかもしれません。ちょっと写真では見にくいかもしれませんが、この酵母菌はピーナツの様な形をしていますので動物病院で耳の汚れを染色して見せてもらうと発見できるかもしれません。
自分が経験したことがあるのはほとんど外耳炎としてですが、マラセチアは口の周りや指の間、肛門の周りに好んで住み着いているようです。なかなか頑固で判別しにくい皮膚病ですので、早めに鑑別診断をしてもらい適切なお薬を使うことで症状を抑えることができますよ!
人間が年をとっていくように犬猫も年をとっていきます。しかも人間の5倍近くの早さで年をとっていくので、昨年平気だったことでも今年になったら体に応えることもあります。身近なところでは食生活に現れてくると思います。いつも食べていたものなのに下痢を起こしてしまったり、しっかり食べているにもかかわらず痩せてきているなど、体が要求している栄養が1歳年をとっていくたびに変わっていくからです。
もちろん何らかの病気で痩せたり下痢をしている場合もありますから病院で診察を受けることが必要になりますが、広い意味では老化も病気の1つです。お飼いになっているペットが今何歳なのか、そして人間の年齢に換算すると何歳になっているのか計算してみてはいかがでしょう。以外と自分より年上になっていたりするものですよ!
15日に眼瞼内反症(逆さまつげ)の手術をしたゴールデンレトリバーが検診にいらっしゃいました。ついこの前まで涙でしょぼしょぼしていた目も術後の腫れも取れパッチリしました。大型犬種では逆さまつげも多いのですが反対の眼瞼外反症(目があかんべしたような状態のもの)も結構多いんですよ。どちらの状態でも目には悪影響(結膜炎や角膜損傷)を及ぼしてしまいます。もちろん目薬で状態を落ち着かせることも可能ですが、やはり重度なものに対しては手術してしまった方が経過は良いようです。
術後の経過が良好なこともうれしいですが、心配で曇りがちだった飼い主さんの笑顔がみれたことが何よりもうれしいですね!
患者さんとの会話のなかで患者さん側からこのコメントを頂くことがあります。患者さんとしては治ってほしいという一心でこのように聞かれているのだろうと思うのですが、獣医側とするとなかなか“はい、大丈夫ですよ!”とは言い切れないものなのです。もちろんちょっとした下痢や嘔吐ならば話は別ですが、重い心臓疾患や整形外科疾患では一度正常な状態のものから逸脱してしまった臓器や骨格がまるっきりもとの状態に戻るということはないのです。獣医的に言わせてもらうと、“日常生活をする上で正常な状態に近くすることならできます。”ということになります。
何か逃げ口上のように聞こえるかもしてませんが、これが本音であり事実だと思っています。だから“絶対に治らないなら治療しない。”なんてあきらめないで、少しでも症状を改善させてあげられるようにがんばってみませんか?治療してみないとわからないこともあるのですから。
抗生物質と言うと万能薬のように思われている方も多いかと思いますが、飲み方や使い方を間違ってしまうと治る病気も治らなかったり、症状をひどくしてしまうこともあります。過去にあった経験では、下痢なので薬を飲ませていたのですが全然治らないと言う患者さんがいらっしゃいました。飲んでいた薬を見せてもらうと抗生物質でした。下痢に限っていうと、便のなかにいるとひどい下痢を起こしてしまう細菌がいた場合その細菌に対して効果がある抗生物質を飲ませますが、それ以外の時には整腸剤(ビオフェフミンのようなもの)による治療のほうが効果があると思います。
動物病院でもらった薬が残っているから飲ませて様子を見てしまう方がいらっしゃいますが、症状によって薬を選んでいます。“これは抗生物質だからだいじょうぶだろう”と飲ませてしまう前に、かかりつけの先生にちょっと確認してみてはいかがでしょう。
昨日の夕方に交通事故で猫が運ばれてきました。(骨盤がつぶれてしまい、両足とも骨折していました)来院したときにはすでに体も冷え切ってしまい、呼吸も荒く粘膜の色も血の気を失った状態でした。血管を確保し、ショック止め注射を打ち点滴をしながら何とか状態の改善を試みてみましたが、治療の甲斐なく亡くなってしましました。(おそらく膀胱破裂もあったのでしょう)
この猫は道ばたでひかれてしまっていたようですが、これから寒くなってくると車の下はエンジンの熱で暖かいため、猫(時には犬も)が潜り込んでいることがあります。去年もこのケースの交通事故が結構ありました。お車を運転される方は走り出す前に車の下のcheckをお忘れなく!
昨日から急に寒くなりましたが、これからの時期(特に猫)注意しなくてはならないのが“尿石症”です。写真はストロバイトの結晶(リン酸アンモニウムマグネシウム)というもので、尿石症のなかで一番よく観察される結晶です。どうしてこの結晶が尿中に形成されてしまうのかというメカニズムははっきりしていませんが、もし尿のなかにこの結晶が観察されたら非常に厄介です。
今までに膀胱炎を患ったことのある猫(特に♂)を飼われている方は“おしっこがちゃんと出ているか”とか“食欲が落ちていないか”よく観察してあげてください。もしおしっこのスタイルをしているにもかかわらずおしっこか出ていないようならすぐに動物病院へ走ってください。この病気は処置が早ければ早いほどいいのですから!
今年、ノミやダニの被害にあった飼い主さんの70%位の方が“ノミダニ予防薬をつけているのにどうして?”と言われていましたが、よーく聞いてみると近所のホームセンターで購入した“〜ライン”とか“〜スポット”という予防薬だったんですね。動物病院で売っているものとホームセンターで売っているもの、何が違うかというと“動物用医薬品”であるかないかの差なのです。ホームセンターで売られているものは安いかもしれませんが、事故などが起きてしまうと問題になるため殺虫効果が非常に弱いものが主成分(効かないわけではありません)になっています。その点、動物病院で扱っているもの(動物用医薬品)では殺虫効果が強いものが使われており安全性の裏付けもしっかりしています。
“動物病院で買うと高い。”と思われている方も多いかもしれませんが、市販品から比べると効果持続期間も長いことを考えると決して高いものではないと思いますが、皆さんどう思われます?
今日は話題になるようなネタが無かったので、私が獣医になろうと思ったきっかけをお話ししたいと思います。まず家業が動物病院だったということは大きいですね。物心ついた頃から伯父や父が診療している姿を見ていましたし、家にはかならず犬を飼っていました。学校で将来の進路は?という質問には“獣医になる。”と答えていましたし。けれども大学受験を意識する高校2年生までは理系の科目は全然ダメでした。(おかげで1年間浪人することになりましたが)
なんとか大学に合格し獣医になる道を歩き始めた頃も、ただ“家業を継がなくてはならない”といった意識ばかりが先行していたのが正直なところです。なので自分がどんな獣医さんになりたいというのも漠然としていました。
けれど大学生の時はほとんどの人がこうなのではないのでしょうか。学生の時は目の前の単位をクリアーすることばかりに目を取られていて、臨床の現場を経験することなどほとんどありませんから。
私が本当に獣医になりたいと思い始めたきっかけは個人的に永岡犬猫病院(現・みなとよこはま動物病院)に実習に行き臨床の現場を目の当たりにし始めた頃からでしょうか。ほかの病院では難しいとされた症例をこなしていく院長をはじめとした病院スタッフを見ていて“獣医師免許を取ったらこなんとしてもここで修行したい!”というのがきっかけですね。
これから(おそらく一生)の目標は“人の役に立てる獣医になる”ことですね。少しでも皆さんの役に立てるようにがんばっていきます!
何年か前の番組で“麻酔”というドラマがあり、手術を受けた女性が麻酔後に覚めることなく植物状態になってしまったという内容だったかと思います。人医療では大きな病院に行けば必ず“麻酔科”というものが存在し“麻酔医”という専門医がいますが、獣医医療では“麻酔医”というものはまだ存在せず麻酔のかけ方も統一されたものはありません。このためか日本の小動物医療での事故で最も多いのが“麻酔事故”のようです。
このように書いてしまうと“麻酔”が非常にこわいものと思われてしまうかもしれませんが・・・
“麻酔事故”というものは起こるべきして起こっているのではないかと思います。というのも事故のほとんどが手術前に適切な身体検査を怠っていたり、麻酔薬についての知識・経験が不足していたり、“大丈夫であろう”という過信や慢心が引き起こしている場合がほとんどだからです。自分も病院を継いでから幸いにも“麻酔事故”は起こさずに過ごしてきていますが、やはり“麻酔”をかけるときには緊張しますし、麻酔を安定させるまでの数分間は気を緩めることなどとてもできません。けれども適切な方法でかけた麻酔はスムーズに手術をすすめることができ、麻酔からの覚醒も速やかです。
“麻酔は決して患者さんにとってはこわいものではありません。”というのが私の答えです。こわいのは獣医の経験不足と慢心ではないかと思っています。それを患者さんが見極めるのは難しいかと思いますが、手術前の身体検査をしてくれなかったり、麻酔方法をはっきり教えてくれない病院はどうかと思いますよ!
獣医の治療というのはどうしても後手の治療が主なものになります。人では自分の体調がおかしいと感じたら病院に行きますよね。けれども動物の場合は飼い主の皆さんが様子の変化に気付いてからの来院になります。症状として表れはじめたときには病状としてだいぶ進行していることが多いものです。
その点ワクチン接種やフィラリア予防薬は目に見えた効果はわかりませんが、着実に病気からペットを守ってくれています。この時期だんだん涼しくなってくるとフィラリア予防薬を飲ませるのを忘れがちな方が多いんですよね。飲ませなくてもフィラリアに感染しなかったのはホントにラッキーだったのです。まだまだ我が地元、宇都宮でもフィラリア感染犬もいますし予防されてない方もいます。フィラリアは先手が打てる治療です。お忘れなく!
左の写真、上の写真も下の写真も同じ犬の写真なんですよ。黄色っぽく見えるものが歯石でその下にはこんなにきれいな歯があるんですね。歯石を取る方法もまちまちなのですが、当院では全身麻酔をかけ超音波のスケーラー(歯医者さんと同じもの)で隅々まで歯石を取っていきます。“麻酔をかける”というと皆さんちょっと敬遠しがちなんですが、起きているときにはなかなか口を開いたままでいてくれないペット達の歯石をきれいに取り除くためにはこの方法が一番だと思います。
最近、ペットの口臭が気になる方はちょっと口の中をのぞいてみてはいかかでしょう?歯槽膿漏になる前に一度ケアーしてあげることをお勧めします。しっかり食べないと健康な体はできませんからね!
今日で3連休も終わりですが、連休中ペットも一緒にお出かけになったことでしょう。旅行先や家に帰ってきてふとペットの背中をなでてみるとごま粒より小さく黒くうごめくものが・・・。そんな経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。そうこれが“ダニ”なんです。もし捕まえようとして跳ねるようなら“ノミ”です。どちらも動物の体に取り付いて血を吸う“小さな吸血鬼”の正体なんです。
さて対処法なんですが、ノミだったらお風呂に入れてしまうのが一番簡単かもしれません。お風呂にはいることでノミが溺れてしまうんですね。吸血中のダニの場合はちょっと厄介です。無理に引っ張って取り除こうとずると、がっちりと皮膚に食い込んだ牙が皮膚に残ってしまうことが多いのです。そこで台所にある食器洗い洗剤を吸血中のダニにたっぷりつけてみてください。しばらくするとダニは簡単に取ることができますよ。吸血中のダニがいたら焦らずこの方法で退治してあげてください。
お気づきのの方もいらっしゃると思いますが、9月11日(木)の下野新聞朝刊にこのホームページが掲載されました。もし下野新聞をご購読されている方はご覧になってみてください。
【お詫び】
本来ならば本日は診察日なのですが、大学友人の結婚式のため臨時休診とさせていただきます。なお明日は通常通り診察いたします。
左の写真は“ペットのジャグジー”で紹介させていただいたジャグジー装置を設置する薬浴槽です。現時点ではまだシーズーやヨーキーしか薬浴させたことしかありませんが、少々小柄なゴールデン位なら入浴ができそうです。ちなみに浴槽の大きさは全長が100㎝・幅が52㎝・深さが41㎝です。
薬浴治療というと“ただのおふろでしょ?”と思われることでしょう。けれどもこれが意外と馬鹿にできないんですよ。日本は古来から火山国として温泉が多く、皆さんも行かれることがありますよね。その地方地方の温泉によって効能は違うと思いますがなかには皮膚病に効く温泉も結構あるようです。皮膚病の治療というと飲み薬の治療が中心ですが・・・
なかなかお薬を飲ませるのが大変だったり、お薬を飲ませることに抵抗を感じてしまう方が多いかと思います。実際難治性のものだとお薬も非常に長期になりますし。
そこでお勧めしたいのが“薬浴治療”です。シャンプーでの治療も良いのですが、効果の強いものだと毎日洗うことでかえって皮膚を痛めてしまうことがあります。当院では軽度の皮膚病や体臭の強いものに対しての治療は“バスクリン”を使っています。さらに重度なものや強い痒みを伴っているものには特別な入浴剤を使っています。どちらの場合でもジャグジー装置を使って薬浴させています。ご自宅でも浴槽にバスクリンを濃いめに作っていただき、その中でよくマッサージしてあげるだけでも効果があると思います。是非、お試ししてみてください。
雌犬を飼われている方はもしかすると遭遇してしまう可能性のある病気かと思います。すべての雌犬がこの病気になるわけではなく、避妊手術をしているとなりにくいとは言われていますがその可能性は五分五分ともいわれています。(個人的には避妊手術をしていると少ないような気がします。)
今日も乳腺腫瘍の手術を受けていたので昼休みに手術したのですが、今回の症例はなかなか大変でした。ここ半年くらいで大きくなった腫瘍自体の大きさ(11㎝×9㎝×8㎝)もさることながら腋窩リンパ節(脇の下にあるリンパ節のこと)にも転移が認められていたからです。リンパ節も何とか切除することができましたが術後は肺などに転移が起こらないか経過をよく観察しなければなりません。
もし体のどこかに今までにはなかったしこりができた場合、早めに病院に行かれることをお勧めします。腫瘍が小さければ傷も小さくてすみますし、何より本人の体への負担も最小限にとどめることができます。腫瘍に関しては“様子を見る前に病院へ!”ですよ。
当院では木曜日が休診と言うことでお休みを頂いていますが、完全に休暇を取れる日ばかりではないんですよ!入院患者さんがいれば必要な治療をしなければなりませんし、獣医医療もどんどん進化していますから東京で学会があれば新しい情報を仕入れに行ったり、非常に難しい手術などは患者さんがいらっしゃらない休診日に手術をしたりと、100%仕事から離れるといったことはありません。(今日は近所の先生のところに手術のお手伝いに行ってました)自分も手に負えそうもない手術は、勤務していた横浜の病院に連れて行って手術してもらいそのまま1日病院のお手伝いをし、宇都宮に帰ってくるのが夜中なんてことは結構ありますし。
休診日の獣医さんもいろいろがんばっているんですよ。自分も患者さんに少しでも良い治療法や薬・技術を提供できるようがんばっていきます。少しでも病気のことでわからないこと、不安に思うことがあったらどんどん質問してくださいね。
父の患者さんがまだ名前も付けていない雑種の犬を連れて来院されました。今日は“避妊手術”を受けるための来院でした。麻酔をかけ、消毒を済ませ、いざお腹を切開してみるとそこにはパンパンにふくれあがった子宮が・・・。そう、彼女のお腹のなかにはすでに新しい命が宿っていたのです。避妊手術の予定が急遽、堕胎手術(子供が入ったまま卵巣と子宮を切除する手術)に変更になった1日でした。
“避妊手術”は別名“卵巣子宮摘出術”といいます。何となく“避妊手術”というと響きが軽く受けられがちなのですが、“卵巣子宮摘出術”というと何となく重々しく感じませんか。その名の通り避妊手術というのは、お腹のなかで非常に深いところにある左右の卵巣を引き出してきて切除し、さらには子宮をなるべく残さないように切除するという大手術なんですよ。自分が勤務医の時に永岡先生も“避妊手術を侮ってはいけない!”と言っていましたよ!これから手術をお受けになる方は避妊手術に対しての見方を変えてみてはいかがでしょう。
今日から動物看護学校の実習の一環で実習生が来ています。やはり父と自分では仕事をしてきた環境が違うので父には頼めない仕事も、さすがに最近の病院事情を知っている若い学生さんは保定や血液検査などの仕事の飲み込みも早く非常にありがたい限りです。約1ヶ月間お手伝い(実習)をしてくれるということなので仕事もはかどりそうです。
今までは何とか一人でほとんどのことをこなしてきましたが、動物看護師さんのありがたみを知ってしまうと実習が終わった後がこわいですね!実習生がいる間も楽しすぎないようにがんばらないと・・・。
診察時間過ぎに慌てた様子で電話がかかってくることがあります。お話を聞いてゆくと“1週間前からおかしかった。”とのこと。以前にも“犬猫の1日”というところでお話ししていますが、1週間前からということはおよそ1ヶ月前からということになります。病気にもよりますが“もう少し早く手を打っておけば・・”ということがあります。その時ほど“もっと早く病院に連れてくれば”と思われる患者さんは多いと思います。
ちょっと様子を見るのも1〜2日位にしておいた方がいいでしょう。もし、夕方お仕事から帰られてペットの様子がいつもと違うようならばすぐにかかりつけの病院にお電話することをおすすめします。そこで様子を見られる状態かどうかを相談してみるのが一番だと思います。獣医さんも生身の人間です。できるだけ夜中は寝かせてあげてください。(これって本音です!)
猫のウイルス病というとまず第1番目に“ネコ風邪”と呼ばれる猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)というものがあります。これはヘルペスウイルスというウイルスの感染によって引き起こされるものなのですが、慢性化するとなかなか厄介な病気です。
当院でもワクチンを打っているにもかかわらず季節の変わり目になると鼻水やくしゃみ、咳などの来院する猫がいます。“何でワクチンを打っているのに?”と思われるかもしれませんが、インフルエンザと一緒でワクチンが効果を発揮できるときもあればだめなときもあります。またFVRは健康なときにはウイルスが体の中で息を潜めているだけで持続感染状態にあり、見た目にはわかりづらいということがあります。そしてほとんどの場合、免疫力が確立していない子猫ときに母猫からこのウイルスをもらっているケースがほとんどです。この母⇒子というサイクルが成立してしまうのはワクチン摂取率の伸び悩みが原因と考えられます。ペットショップで飼われた猫はほとんどの猫がワクチン接種済みですが・・
どこかで拾われてきた猫だと避妊や去勢は積極的にされる方は多いのですが、なかなかワクチン接種となると“ちょっと”という方がまだ多いようです。(キチンとされている方、すみません)ワクチンを打つことで免疫力を高めておけば感染や発症を押さえ込むことができ、病気を広める事も防ぐことができるようになります。
昔から“風邪は万病のもと”といわれています。これは猫の世界でもおなじこと。たかが風邪と思わずにワクチン接種をすることで猫社会からFVRを減らせるようがんばってみませんか!
以前より予定していたペット用のジャグジー装置を導入しました。最近ではペットの病気も多様化していますがその中でも皮膚病でお悩みの方が多いのではないでしょうか?食生活なのか生活環境なのか明らかに原因を特定できない皮膚病を“アレルギー性皮膚炎”とか“アトピー性皮膚炎”といいますが、従来の治療法としてはシャンプーやお薬による治療法がほとんどでした。当院でも難治性の皮膚病には頭を悩ませていたのですが、このジャグジー装置により皮膚病に新たな光が見えてきそうな予感です。現在入浴中の・・・
シーズー犬も当院にいらっしゃるまでお薬やシャンプーでの治療を行っていましたが、思ったような治療効果が得られていませんでした。今日で3日目の入浴なのですが、シャンプーでは取れなかった皮膚にこびり付いていた皮脂がジャグジー装置による細かい泡と専用の入浴剤によりだいぶきれいに取れ、皮膚の色も何となく良くなってきています。もちろん全ての症例に効果が認められるかどうかはわかりません。けれども今まで何をやっても効果が無かったワンちゃんに是非おすすめします。(このシーズー犬の経過は後日報告させていただきます。)
どこの動物病院でも診療時間というものがあります。午前の診療から午後の診療までの休み時間が3〜4時間ある病院がほとんどだと思うのですが“何をやっているの?”と思われている方も多いかと思います。ほとんどの病院では麻酔処置や手術、往診ではないでしょうか?やはり診察時間内では救急の場合を除いて麻酔をかける処置は、獣医さんがたくさんいる病院でもない限りなかなか難しいもんです。以前勤務していた病院では獣医が10人以上いたので、外来の患者さんを診察するチーム・麻酔処置に取りかかるチームに分かれることが可能だったので1日に多いときでは8個くらいの手術をこなしていました。けれども獣医さん1人とAHT(動物看護師)さん1人くらいの規模の病院では手術中に患者さんがいらっしゃっても十分な対応がとれないこともあります。
ここで獣医さんからのお願いです。昼休みにいつもいつも手術をしているわけではありませんが、せめてお昼休みにしかいらっしゃれない場合にはせめて電話で1本連絡を入れてもらえるとありがたいですねー。手術中に急にフィラリアの薬を取りに来られても正直“おいおい!”って感じになりますからね。
自分が大学を卒業して臨床の世界に入ったとき、“絶対〜”という言葉ほどこの世界で安易に使ってはいけないと思ったことがありました。交通事故で運ばれてきた猫なのですが、レントゲン写真や血液検査の結果を見る限り“どう見ても助からないだろう”と皆が思っていた症例が日を追うごとに快復して若干の後遺症は残るものの無事に退院してゆくことができました。これに対して、ついさっきまで走り回っていた元気な犬が急に倒れ込んだと思ったらそのまま亡くなってしまったということもあります。
人医療でも動物医療でも絶対ということは無いと思っています。特に直接本人に話を聞くことのできない動物医療では、お掛かりになっている先生の経験と検査結果などから判断して治療してゆくわけですからなおのことです。
患者さんとしては“絶対大丈夫ですよ!”という言葉をかけてもらいたいと思います。けれども動物医療の世界では本当に何が起こるか予期できないことがあります。(自分は実家の病院を継いでからこの言葉は使ったことがありません。)もし良い意味でも悪い意味でも“絶対〜”という言葉をかけられたとしても一喜一憂しないでくださいね。
この本は患者さんから頂いたのですが、患者さんの立場からするとこんなにいい本はないんでしょうか。もちろん獣医の立場から読んでも改めて勉強になることが書いてありました。
人間ではよく週刊誌などに“この病気ならこの病院”とか“〜〜の名医”なんていう特集が組まれることがありますが動物ではなかなかこのような特集は組まれませんよね。それをこの本が全て解消してくれるのではないでしょうか。私の知っている限り獣医界のプロフェッショナルな先生方ばかりです(なかには非常に個性的な先生もいますが)。今、何か病気を患っている方も患ってない方も一度お読みになってみることをおすすめします。ちょっと目から鱗が落ちるかもしれませんよ。(光文社 KAPPA BOOKS 二歩先をゆく獣医さん)
ちょっと重々しいタイトルですが、大型犬を飼われている飼い主さんは一度は耳にしたことがある言葉だと思います。この病気は特にレトリバー種によく見かけられる遺伝的疾患です。左の写真の犬もゴールデンレトリバーなのですが、最近右後ろ足を引きずるようなそぶりがあるとのことで来院されました。レントゲン(写真左側が右足)を撮ってみるとどちらの股関節もあまり良くないことがわかりました。飼い主さんは股関節形成不全ということを知ったときショックを受けていたようでしたが、手術以外にも最近は良い治療法があることを説明すると少し安心されたようでした。
股関節形成不全の治療法には内科療法・理学療法・外科療法があります。
まず内科療法ですが、内科療法というのはお薬を使った治療法のことです。一昔前までは痛み止めというとアスピリンやステロイドが主体だったのですが、長く飲んでいると体に副作用を起こすためにうまく痛みをコントロールすることが難しかったのです。最近では長く飲んでも副作用の少ない非ステロイドの消炎鎮痛剤が認可されたことで、うまく痛みをコントロールすることができるようになりました。
理学療法というのは内科療法を行いながら併用することで非常に効果が期待できる治療法です。人医療でも針や温浴療法・半導体レーザーなどの方法が挙げられるのですが、最近では動物医療でもレーザー治療器が開発され股関節形成不全にはもちろん椎間板ヘルニアや腱鞘炎などにも非常に効果があります。当院でも椎間板ヘルニアのダックスに非常に満足できる効果がありました。
最後に外科療法ですが、これは本当に最後の手段だとお考えください。仮にあなたの犬が股関節形成不全と診断されたとしてもそれがすぐに外科手術の適応かどうかは専門病院や大学病院にセカンドオピニオンを求めた方がいいと思います。手術だけが治療法ではないのですから。